”他人の愛情”エピソード3

【じぃじ@キャンバス9】
ヒコーキと飛んだ少年の心

「心の自由」を解放した人生の恩人
「子どもの学ぶ本能」開眼エピソード

・・・

新聞少年は、
陸軍練兵場跡のベンチで
一休みしてから

最後の30部を配達するのが
ペースだった。

練兵場跡グランドは広いので
模型飛行機を飛ばして遊ぶ

おじさんたちのたまり場
だった。

「坊や、飛ばしてみるかい?」

ひとりのおじさんが
大切なものだろうに

ライトプレーンA型機を
少年に差し出した。

「いつも、ここで一休みだね」

右手の人指し指で
キリキリと

時計回りに
プロペラを60回、回転させる。

プロペラに繋がる
ゴム束の復元力は、

発進準備OK!

と、力強く
人指し指に伝えてくる。

機体を左手から右手に持ち替え、

左手でプロペラ回転を制止しつつ
45度上空へ、機体を定める。

ヒコーキおじさんの指示どおり
飛行方向の空を確認する。

胸が高鳴る。

回転制止の指を
はずした瞬間、

プロペラの風切音と振動が
機体をもつ右手に伝わりきて、

感動の極み!

と、

「よしっ、発進!」

おじさんの声。

画像の説明

www.aero.or.jp

新聞少年から放たれたヒコーキは
グングン秋空高く遠ざかり、

少年の心を乗せて
青空を旋回していく。

「坊、うまいぞ!」

この
20秒間ほどの初飛行は

その後に8年間も続く
「大空への夢」スタートの瞬間だ。



じぃじ@少年が

Learning over Education
学習意欲が教育を越える

子どもの「学ぶ本能」

に目覚めた
すべての始まりだった。



ヒコーキおじさんとの
出会い以来、

新聞少年の心は

ライトプレーンA型に乗って
青空高く飛び続け、

自分のヒコーキを
作り続ける毎日となった。



・・・

姫路市を貫く国道2号線が
国鉄播但線を跨いでいる陸橋の下に

模型屋さんと
蛇屋さん(漢方薬局)が
並んであった。

初飛行以来、
じぃじ@少年にとって

模型屋さんは「近くて遠い」
お店屋さんとなった。

画像の説明

www.otokukamo.com

A型キットは60円
B型高翼キットは90円。

少年は、
買えないヒコーキキットや部品を

見て確認するだけで
うれしくて

配達帰りに
店内を一周する日が多くなった。

買えなくたって、楽しくて
たまらない!

店内の天井からは

モノコック骨格
グライダー
複葉機
動力機などなど

あらゆる機種のヒコーキが
つり下げ展示され

キット袋の透明セロハンからは
部品が見える。

その形状
材質
用途などを

自作ヒコーキの参考に、と
考えながら過ごす

店内のひとときは、心躍る。



時には、

整理整頓された工具壁の前にある
工作台上で

ヒコーキを作る親方店長の手元に、目が釘付け。

手を休めた親方に
すかさず、質問すると

ニコニコ答えて
くださった・・・・。

買えない常連客の少年は、

ヒコーキ作りの情報知識を
蓄積しながら、

ヒコーキ製作に必要な
材料の自作に挑戦し続けた。

翼材料: 竹ヒゴ 桐製翼型リブ
胴体材料:女竹

と、想定し
その実用化に四苦八苦挑戦するのも
楽しい日々だった。

素材は、

家から15分の

戦火から避難したこともある
シラハエ釣りもする河原

など、生活圏から調達。

市川(1級河川)の堤防からは、
女竹の3年物を冬に切り出した。

道具は、

当時の餓鬼ども憧れのナイフ
【肥後の守】!

町の鍛冶屋さんが鍛造した
小形の折り畳みナイフが重宝した。

新聞配達の月給1,500円全額を
家計に入れていたが、

ヒコーキおじさんとの
出会い以来、

少年は
生まれてはじめて

「小遣いとして、月50円を頂きたい。」

と、申し出た。

そして、

初めて使った小遣いが

この
25円の【肥後の守】だった。

大空への夢の8年間、

【肥後の守】を自分で研ぎつつ、
愛用し続けた。



材料の女竹は、

1メートルに寸切りして
1か月間の乾燥後、

4分割に縦割りして
さらに、2週間乾燥。

それを
【肥後の守】で削り
竹ヒゴに加工しようと

試行錯誤を重ねた。



しかし、

女竹製竹ヒゴの短所である
「ねじれ」が出た!!

翼縁まわりの
部材にするためには、

ローソクの炎辺縁部の熱で
竹ヒゴを均等に加熱し

軟化(竹油しみ出しがサイン)
させながら

曲げる力を微妙に加えつつ
翼辺縁の形に曲げ、冷却固定する。

しかし、

根気のいる作業を重ねて
加工技術を体得しても

まだ、なお

熱加工した女竹の竹ひご製翼に
ねじれが生じる事が多い。

これでは安定した飛行は不可能
と、判断した。

それは、

熱加工後の女竹・竹ヒゴの
繊維のねじれが

翼辺縁形のねじれと連動している
という

細かい観察から得た
事実の発見だった。

じぃじ@少年
科学的な思考をGET〜☆



これは、

小学5年生が終わった
春休みのことだったが、

何かしら

「大発見した!」

と、うれしい気分になった。



失敗しても
自分で事実を発見するのがうれしい

のちの
一斉授業ナシで個人研究

という
「ハラのふくれる授業」実践につながるねぇ。

(はら@寺子屋のつぶやき)



そこで、

模型屋さんの親方に

自家製の女竹・竹ヒゴと
翼の骨組みを手に取ってもらい、

これまでに気付いた
翼のゆがみについて話してみた。

すると、
親方はニコニコ笑顔で

「坊、なかなかやるなあ」

と言いながら、

棚から商品の
真竹・竹ヒゴを取り出して

少年の
女竹・竹ヒゴと並べてみせて

「切り口を比べてみい。

女竹は荒いし
繊維の並びが・・・。」

と説明し出した。



現物を使って
細部を比較する科学的な方法に、

少年は感動し、深く納得した。

「親方はすごい人だ!」

と、思った。



「ありがとうございました。」

帰ろうとする少年に、

「坊、待ちな・・・。」

と、言いながら、

「ワイ(俺)からのプレゼントや」

と、
棚から

竹ヒゴ
アルミ管
桐製翼型リブなど

少年の「夢の部品」を
新聞紙に包み込み

「がんばりぃや」

と、手渡してくださった。



感激した少年は、

ますます
親方の模型屋さんの
常連になった。

・・・

半年後、

自作のヒコーキで

研究
実験
試作を

続けた結果、

新聞少年は
「市民模型ヒコーキ大会」で
3位に入賞した。

その表彰状と記念賞品を
手渡してくださった団体会長は、

あの
「ヒコーキおじさん」だった。

その横では、

ニコニコ顔の親方が
拍手をしてくださっていた。



頂いた賞品は

ヒコーキ用のゴム束
数年分もあって、

たいそう助かった。



じぃじ@少年は、

ヒコーキおじさんとの出会いを
契機に

科学工作
科学研究の魅力

学問への畏敬の念
を実感し、

毎日楽しく自ら自学自習し、
予習する習慣を身につける

そんな
思春期を生きたのです。



子どもは
心の自由が保障されれば

「本能的に学ぶ」

その普遍性は

自分の経験からも
実証できます。



あの

ヒコーキおじさんと
親方は

新聞少年の
「心の自由」と
「学ぶ本能」を開放した

人生の恩人であったのです。